「グリーンニューディール」の成功には 民間のパートナーが必要

「グリーンニューディール」は、大型政策としてではなく、カーボンニュートラルという壮大な目標を追求しながら米国経済を広範囲に再生するための機会ととらえるべきです。

2021年3月25日    |    グローバルCIO スコット・マイナード


本稿版はロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されました。

「グリーンニューディール」については多くの意見があるが、野心的であるという点では一致している。グリーンニューディールは、国全体のカーボンニュートラル(炭素中立)という高い目標を追求するなかで、まさに米国経済を広範囲に再構築し、あらゆる産業、企業、雇用を一掃してしまう可能性がある。

特に雇用には最も大きな反動がある。組合の支援を受けた何千人もの熟練労働者は、実際に自分たちのどの程度が高賃金の石油産業での雇用から、太陽光発電や風力発電所の建設に移行することになるのか懸念している。

経済の変革は常に勝者と敗者を生む。すなわち、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが言うところの「創造的破壊」である。私は、ペンシルベニア州西部の鉄鋼・石炭産業の衰退と生活に困窮する労働者の苦境を目の当たりにしてきた。しかし同時に、私のふるさとでもある同州のピッツバーグが、政府と民間相互の協力により、医療、高等教育、テクノロジーをテコに地域経済のエンジンとして再生するところも見ている。

グリーンニューディールは、フランクリン・D・ルーズベルトのニューディール政策のような、政府の大型プログラムという従来の視点でとらえるべきではない。グリーンニューディールの目標は、政府が化石燃料との公平な競争を促しながらクリーンエネルギーに有利な優遇措置という形で「支援の手」を差し伸べつつ、民間部門のインセンティブを通じて実現できるものである。

その一例が、北極圏のインフラ・プロジェクトとクリーンエネルギー開発のガイドラインを示した北極圏における投資協定(Arctic Investment Protocol)である。(私はこの協定のゴールの設計支援に関する弊社の参加を主導した)。協定の目的は、環境や地元先住民への配慮なしに地域が分割されるような無秩序な開発を避けることである。世界経済フォーラムが提案したこの協定は、責任あるインフラ開発と再生可能エネルギーに重点を置いた官民パートナーシップ(PPP)を呼びかけている。我々の北極圏での調査によると、温室効果ガス排出量の削減に向けた市場のインセンティブが活用されることで炭素排出量が大幅に削減されていることが十分な実証の上、判明しており、効果的である。化石燃料の生産者に対する連邦補助金を撤廃する一方で炭素税を課すことは、大きな一歩となる。

問題は、自由市場のインセンティブは依然、補助金と比べて見劣りがすることである。化石燃料業界に対する直接の政府補助金は年間約200億ドルで、政府が2020年に農業補助金に拠出した463億ドルに比べるとさほど大きくはない。しかし、驚くほど大きいのは、いわゆる値段のつけられない外部効果(unpriced externalities)の6,490億ドルである。これは化石燃料の生産者と利用者が負担するのではなく、社会全体が負担する大気汚染、交通渋滞、医療などの間接コストであり、支払われない形の補助金となる。

炭素税の導入は、化石燃料業界への直接補助金の減額や撤廃と組み合わせれば、優れた最初のステップになるだろう。導入の際に必要なポイントは税収中立(revenue-neutral)のアプローチである。これは、炭素税を他の分野の減額や相殺と組み合わせることで、増税が低所得の消費者とエネルギー利用者の追加負担にならないようにし、コスト増とはならず行動変容という意図した効果を生み出す手法である。逆進的(所得の高い層ほど税負担が相対的に低くなる)で、低所得者に負担が偏りがちな連邦ガス税を撤廃すれば、これを実現できる可能性がある。他でもないオバマ元大統領が、自分はこの政策の組み合わせを支持すると私に語っていた。

炭素税が有効かどうかについては議論があるが、進展の一つの兆しとして、石油会社自身が、より厳しい規制を避けるための戦術とはいえ、この構想に同調しつつある。

この税は導入するのが容易とみられ、すでに他の国々では実施されているため、家庭と企業に最も少ないコストで排出量を減らす最良の方法であると納得させやすい。同時に税収分を家庭に還元したり、インフラ支出や赤字削減に使うことも可能だ。

政府がバッテリー技術などのニューテクノロジーや電力網を近代化し、強化するためのプログラムに投資すれば、安全保障上の課題に取り組みながら脱炭素社会に近づけることができる。さらに、山火事のリスクやそれに伴う環境、物的損害のコストを減らすというメリットもある。

こうしたなか、バイデン政権はおそらく、トランプ政権時代に棚上げされたクリーンエネルギー・プロジェクトのために未使用の低利ローン430億ドルを使い、民間部門による電力網の近代化を支援するだろう。そうなれば大手研究機関での高度技術職の新規雇用が生まれ、太陽光・風力発電、バッテリー装置の製造現場では低スキルワーカーの雇用が増える。

実際には、クリーンエネルギーの雇用は2019年末時点で、すでに1に対してほぼ3の割合(119万人に対して336万人)で化石燃料の雇用を上回っていた。クリーンエネルギーの雇用は、2015年から2019年の間に雇用全体の6.1%成長を大幅に上回る10.4%の成長を遂げた。また、米国の労働省労働統計局は、2019年から2029年の間に最も成長する職業トップスリーの2つは、風力タービンのサービス技術者とソーラーパネル設置業者になると予測している。

カーボンニュートラルな経済への移行は損失を伴う。これらの損失は、影響を受ける人々にとっては痛みだが、新たなチャンスはそれを補って余りあるものになる。この痛みの多くは、労働力を再編するための職業訓練と教育を通じて減らすことができる。カギになるのは、現状打破に向けて政治的勇気をもつこと、そして確実に誰もが取り残されないよう最後までフォローすることである。

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