持続可能な未来のために、 経済生産高ではなく、経済的影響を測定するべき

経済統計によって社会的または環境的な影響は測れません。

2020年1月17日    |    グローバルCIO スコット・マイナード


経済統計の長年の利用者ーー経済統計が頭から離れないマニアックな利用者と言う人もいるーーとして、私はデータに関して二つの重要なことに気づいた。第一に、正しい数字を見なければならないということ、そして第二に、将来の結果の予測に関して言えば、「正しい」数字でさえ多くを見逃すということだ。

私はこれまで何度も、特に2~3の大きな経済の転換期にこうしたことを目にしてきた。

私は1960年代に西ペンシルバニアで育ち、国の石炭の40%がピッツバーグから100マイル以内で生産され、ピッツバーグが経済の原動力であった世界で暮らしていた。しかし、そうした全盛期の同地域の成長について語るデータはどれも、鉄鋼業の衰退の経済的コストと何世代にもわたって償うことになる環境破壊を予測できなかった。

1961年から1966年まで、米国の年間国内総生産(GDP)は平均して約5%伸び、失業率は平均4.8%となり、インフレ率は2%を下回った。これらのデータポイントしか知らなければ、1967年のLong Hot Summer(長く暑い夏)と呼ばれる人種暴動につながった経済的・社会的不公平を感じ取ることは決してなかっただろう。

2006年と2007年には、大半の投資家と政策当局者は住宅価格の急騰に関連する経済成長エンジンが世界的な金融混乱の源となる兆しを見逃した。

現在、グローバル化は世界中のかつてないほど多くの人々に経済的繁栄をもたらしたが、それと同時に富と所得の不平等の拡大、社会的セーフティネットの縮小、炭素排出量の増加も招き、この先長年にわたってそれらの影響を被ることになる。

多くの人はGDPを国の豊かさを測る包括的な尺度ととらえているが、GDPは当該生産にかかるその他のコストや社会/環境問題への対応の進捗度を測るものではなく、それら問題の多くはいまだ対応がなされていない。例えば、世界のGDPが5%成長すると、地球の地表温度が0.5℃上昇するが、世界のGDPが3%成長であれば、地表温度が低下する場合、これら二つの成長結果をどのように比較すればよいのだろうか。

GDPは経済生産高の測定においてさえしっかり役目を果たしているわけではない。デジタル化がますます進むサービス中心の経済を測る難しさ、不備のある手法、プロシクリカルな大幅修正といった理由から、GDPは経済的安定性の尺度としては欠陥のあるものとなっている。他の伝統的なマクロ経済指標も完全に役目を果たしているわけではない。現在の米国の失業率は50年ぶりの低さにあるが、このことが大半の人々の豊かさ(幸福度)を正確に伝えているとは言い難いだろう。

ここで皮肉なのは、環境・社会問題対応の進捗度を測るデータがすでにある程度存在しているにもかかわらず、実業界、経済界、投資業界、公共政策関係者がしかるべき注意を払っていないことである。

国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成する見込みがあるならば、既存および新規のデータセットを用いて環境・社会面の進捗度を経済的観点から測定することが不可欠である。これを成し遂げる方法はいくつかある。

ピーター・ドラッカー氏はかつて「測定されるものは、管理される」と語った。より良いリアルタイムデータがあれば、環境・社会面の進捗状況を追跡できるだけでなく、結果に対してこれまで以上に説明責任を果たせるようになるだろう。失業率の上昇や経済成長の減速を抑えるために伝統的な財政・金融手段を取る政策当局者は、データ中心の、エビデンスに基づく、新たな政策を策定し、混乱を招く可能性があっても必要な措置を導入できるようになるかもしれない。炭素税、土地利用の改善、税法を通じた労働参加率向上プログラムなどの政策やインセンティブはいずれも、進捗状況を測定する正確なデータがあれば、有効性が高まるだろう。

環境・社会上健全な活動のために経済成長を犠牲にする必要や、責任投資を行うために大きな安定したリターンをあきらめる必要がもはやないことは朗報である。実際、今後は、理にかなった持続可能性アプローチなくして、経済的繁栄を果たすことはできないと確信している。適切な測定ツールの使用やテクノロジーの発展をもってSDGsを達成すれば、時代遅れの古いパラダイムに固執するより速いペースで、あらゆる人々の生活水準を引き上げることができるだろう。

しかし、SDGsの達成で最大の課題となるのは、投資家と政策当局者にタイムホライゾンを長期化するよう促すことである。社会・環境問題に無為無策であることがもたらす結果がますます明らかになっているにもかかわらず、今すぐ行動する直接的なインセンティブがほとんどないため、総合的なコストが今後大幅に膨らむのは確実である。こうした「ホライゾン(地平線上)の悲劇」とは、ひとたびSDGsを達成できないことが決定的となった時には、すでに手遅れの可能性があるというものである。公的セクターと民間セクターがそれぞれにとって最善の経済的利益となることを行うインセンティブを見いだすまで、持続可能な開発目標は引き続き達成し難いままとなる。データを使用して進捗状況を測定する方法を再考し、適切な自由市場のインセンティブを考案すれば、成功する可能性は格段に高まるだろう。

 

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