インフラ投資財源確保の解決策

オバマ政権時代のビルドアメリカ債を復活させれば 増税に頼らず資金調達が可能と考えられます。

2021年7月26日    |    グローバルCIO スコット・マイナード


本稿はFinancial Times紙に掲載されました。

バイデン政権が提案したインフラ投資計画には数多くの利点がある。整備された道路、きれいな水、Netflixに「はまる」ための高速ブロードバンドを望まない人はいないだろう。しかし、その目的は賞賛に値するものの、実現のための手段が政治的な論争の火種となっている。すなわち、1兆ドルのウイッシュリストの財源をどう確保するかだ。

民主党左派が望む増税については、対象となる富裕層や企業の数が限られている上に、その多くが節税策に長けた会計士を擁している。市場にはインフレへの懸念が漂い、食料品や車の価格上昇が既に消費者を直撃している中で、紙幣の乱発は決して得策ではない。

バイデン大統領の計画についてはほかにもいろいろと議論となる点があろう。しかし、私の関心事は財源をどう確保するかであり、この点は実際にコストを負担することになる多くの納税者も同様であろう。実は、バイデン大統領の提案の中には「ダイレクトペイ・ボンド」という言葉が埋め込まれている。私は、これこそがインフラ投資計画の大半を賄うための唯一かつ最良の方法と考えている。

その名称から受ける印象とは異なり、ダイレクトペイ・ボンドとは州その他の地方政府(以下「州政府等」)が発行する地方債で、連邦政府が利払いに補助金を出し利子が上乗せされたものをいう。課税債となるため、潜在的な投資家層が(補足:税制優遇措置のある)年金その他の基金や政府系投資ファンドにまで拡大される。この種の投資家は利回りが高い課税債を好むため、通常は免税地方債にはほとんど関心を示さない。

バイデン大統領はダイレクトペイ・ボンドのことをよく分かっているはずだ。なぜなら、これはオバマ政権時代のビルドアメリカ債(BAB)の復活版であるからだ。BABとは2009年米国再生・再投資法(American Recovery and Reinvestment act of 2009)で導入されたもので、州政府等が公共投資の資金を調達するために発行した課税債である。

債券の発行体が支払う利子には連邦政府が35%の補助金を交付し、州政府等の借り入れコストが低減された。2010年末にプログラムが終了するまでに、1800億ドルを超えるBABが発行された。

直近の事例としては、4月に超党派の議員により上院に提出された2021年米国インフラストラクチャーボンド法(American Infrastructure Bonds Act of 2021)がある。この法律に基づき発行される債券の発行体には、支払利子の28%が補助金として交付される。

BABの利点は、連邦政府の歳入となる米国債とは異なり、地方レベルでの支出を賄う資金を直接調達するという点である。これにより、都市や州、投資家が、FRBに対する受け身の傍観者ではなく、インフラストラクチャー投資の実質的なパートナーとなる。


BABの利点は、連邦政府の歳入となる米国債とは異なり、地方レベルでの支出を賄う資金を直接調達するという点である。これにより、都市や州、投資家が、FRBに対する受け身の傍観者ではなく、インフラストラクチャー投資の実質的なパートナーとなる。

連邦赤字は膨らみ続けているが、BABは国債のように国の赤字を増やすものではない。さらに米議会予算局によれば、州政府等は既に米国のインフラストラクチャー建設費の約60%、そして運営・維持費の何と90%を拠出している。

今回のビルドアメリカ債プログラム拡大バージョン(仮にBAB 2.0と呼ぼう)は、バイデン政権の支出計画を含め、米国が必要とする推定4兆ドルのインフラニーズのかなりの部分を充足することができるであろう。

BAB 2.0に基づき、州政府等は2年間で4兆ドルの債券を発行し、増強されたインフラ整備計画のための資金を調達する。そして今回、連邦政府は、米国の切迫したインフラニーズを反映して、金利支払いを最大で100%補助する。

現在、課税地方債の金利水準はおよそ2%であるから、連邦政府の負担額は年800億ドルとなる。しかし、投資家の利子所得に対する連邦課税により、予算への影響はネッティング効果で軽減される。投資家の半分が課税されると仮定し、連邦所得税の最高限界税率である37%を適用すると、年間の負担額は650億ドルまで減額される。

また、利子補給額は対象となるプロジェクトの性質に応じて調整される。例えば、クリーンエネルギー技術に対する補助は、二酸化炭素排出量の多いプロジェクトに対する補助よりも多額となる。

なお、過去の経験から言えば、BAB 2.0は、米国の財政再建を進めるために政府事業への資金供給を差し止める形で連邦政府の歳出を強制的に削減するシークエストレーション(sequestration)の対象外とされるべきである。そうしないと発行体は、先行きの見通しが立てにくくなる。仮に対象とされた場合、2021年から2030年の間に債券発行体に支払われる利子補給金が5.7%削減されると予想されている。

しかしこうした問題が解決されれば、BAB 2.0は、納税者に過度の負担をかけることなく米国のインフラ整備ニーズに対処する優れた方法となる。米国のインフラストラクチャーの現状とまちまちの景気見通しを考慮すると、ワシントンは大胆な計画を必要としている。ビルドアメリカ債の復活は、公共投資ニーズを充足するのみならず、雇用機会を創出し、より生産的な経済へとつながる環境を整えることとなろう。

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